労苦
「ええ」


 俺の問いに、大村が淡々と切り返す。


 そして、軽く息をつき、


「――危ないとでも?」


 と言葉を重ねてきた。


「はい。ですが、のさばらせることは出来ませんね。あの人間たちに日本人の血は一滴たりとも流れてません。売国奴ですから、日本政府としても手を打っています。逸早く追い出すようにと。現に外務省関係者も、あちらの国の政府関係者に打診してますし……」
 

 そう言い、軽く息をついた後、唇を結ぶ。


 大村が、


「実は矢野原監察官が先日いらっしゃって、今、梶間警部が仰ったことと全く同じことをお言いになったんですよ」


 と言って、口角を歪めた。


「そうですか。だったら、話は早いですね。いずれ監察官が外務省関係者に意見を申し入れされるでしょう。……在日外国人など、犯罪の温床にしかならないのですからね」




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