労苦
 その日も午前十時前に一課のフロアを出て、歩き出す。


 地下駐車場に降りて、助手席に橋村を乗せ、運転席に座って車を出した。


 また南新宿へと向かう。


 警部補で元上司の門島のことが脳裏をよぎる。


 厳しかったからな。


 そう思えていた。


 実際、現場百遍などと、くどく言われていたのである。


 そして俺の方もその通りにしていた。


 今頃どうしてるだろう?


 そんなことを考えていると、人間の出会いの大切さが身に沁みる。


 南新宿のコインパーキングに車を停め、歩いて現場へと着き、辺りを見て回った。


 この街もいろいろある。


 街の模様に、人間模様も。
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