労苦
 署内で青酸性化合物を持ち合わせていた人間は絞り込める。


 捜査を妨害するため。


 そうなると、一体誰が?


 ちょうど大村の遺体は、搬送された病院の地下室へと安置される。


 遺族が集まり、急ではあるが、通夜と葬儀が営まれる手筈も整った。


 七月の蒸し暑い時に死んだ人間も哀れだ。


 そして俺も橋村と共に亡くなった日の夜の通夜に臨む。


 大村もまさか、自分が殺されるとは思ってなかっただろう。


 それぐらい唐突だったのである。


 葬儀場は急ごしらえで、幾分抵抗があった。


 だが、警察関係者が集まる。


 唯一よかったのは、葬儀場中心にある遺影だった。


 笑った写真が飾られている。




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