労苦
第24章
     24
 水曜の午後十一時過ぎに、大村の通夜が営まれた新宿の斎場を出た。


 夜風に吹かれながら、通りを歩く。


 蒸し暑い。


 連日、夜間は寝苦しい。


 そう思い、地下鉄に乗り込んで、自宅へ戻った。


 大村は殉職じゃないから、死後も階級は上がらない。


 俺たちが帳場に行った時には、すでに倒れていた。


 問題は事件当日の午前十一時半から正午の間に、大村のコーヒーカップに青酸カリを仕組んだ人物が誰かである。


 もちろん、署でも刑事課内に居合わせた人間が毒を盛ったと考えるのが妥当だ。


 警視庁科捜研が、事件現場に残されていた物証全てを回収し、事実関係を調べる。


 通夜の翌日、葬儀だった。


 思う。




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