労苦
 俺の方は深呼吸を繰り返しながら、汚れた空気を吐き出す。


 そして、


「まあ、事情はいろいろあるけど、総じて謎だな」


 と言った。


「やはりそう思いますか?」


「うん。どう考えても、大村係長が青酸カリ中毒で死亡したのは、ショッキングだ」


「おそらく同じ署内に毒殺犯がいるんですからね」


 橋村が軽く息をつき、庁内を歩く。


 敵討ちしたいのだが、現時点で警察はまとまった捜査情報を掴めてない。


 やはり裏で何かあるのだった。


 単に青酸カリを致死量コーヒーに盛り、含ませただけにしても。


 三十分間という犯行可能な時間があり、所轄の捜査員に実行犯がいるのも間違いない。


 だが、その実行犯は一体誰から命令されたのか?



< 224 / 666 >

この作品をシェア

pagetop