労苦
 事件の背後で、いろんな人間をコマのように操る凶悪な人間がいるなと。


 車を出てから、南新宿の街を見続ける。


 曇りだったが、通りを多数の人が歩いていた。


 雑踏に紛れながら、現場を見回し、歩き続ける。


 いくら捜査慣れしていても、事件発生現場を見るのは、刑事の仕事の基本中の基本だ。


 ずっと歩く。


 そのまま、南新宿署へと向かった。


 刑事課に行くと、前田も石川もいて、軽く一礼してくる。


 俺も橋村も礼を返し、帳場へと入っていった。


 そして椅子に座り、室内を窺う。


 大村を青酸カリ中毒で死に追いやった実行犯は、ここの署の誰かだ。


 ほぼ間違いなかった。


 おそらく毒物はビンなどに入れて、デスクの引き出しなどに仕舞い込んでいたのだろう。





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