労苦
 川中も以前、神宗会摘発で一部の捜査員を動かしたことはあった。


 だが、捜査は失敗に終わり、何としてでも失地を回復したいだろう。


 組対の作戦は大抵分かる。


 入念な情報収集を行い、スパイ工作なども併せながら、対象を潰しに掛かる。


 俺たちもじっと見極めるつもりでいた。


 二日後の金曜の朝、晴海に送られて自宅マンションを出、千代田方面行きの地下鉄に乗る。


 揺られながら、スマホを見ていた。


 警察の捜査は伏せてある。


 マスコミが嗅ぎ付けていても、警察サイドが一定の圧力を掛けているのだろう。


 だから、ニュースにはならない。


 三原社長が殺された件は報道されていても、世間の多くの人が三原を殺害した容疑者を知らないのだ。


 神宗会のことも極力伏せていて、捜査関係者が知る情報は限定的にしか報道されない。
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