労苦
「梶間警部」


「何でしょう?」


 前田の呼びかけに答えると、


「事件は一向に解決しませんね」


 と言って、泣き言を漏らす。


「仕方ないですよ。決め手がないものですから」


「捜査が膠着している以上、打開策などは考えておられますか?」


「まあ、上の人間を動かせば、なにがしかの指令や命令は出てくるのでしょうが……」


 そう言って、軽く息をつく。


 石川がコーヒーを人数分淹れて、持ってきた。


 一口啜ると、安物のようで、香りなどはしない。


 単に眠気覚ましのためだけのようだった。


 橋村と揃って飲んでいると、前田が、
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