労苦
 夏の終わりで、若干涼しい。


 日中気温が上がるにしても、一カ月とか三週間前ほどじゃなかった。
 

 その日も庶務をこなし、正午前にフロアを抜け出る。


 庁内の食堂で丼物を食べ、地下から車で建物を出て、南新宿へ向かった。


 道路は混んでいる。


 都心へ向かう車が多いのだ。


 土曜であっても……。


「梶間さん」


「何?」


「川中組対部長は捜査のゴーサインを出しませんね」


「ああ。鈍いんだろうな。……でも、組対が動く時は、いよいよ決戦になるだろうね」


「ええ。警察と暴力団の全面戦争は避けられません」


「俺も怖くてしょうがないんだ。野放しにされた獣が暴れ回ると思うと」





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