労苦
「用済み?」


「ああ、危ないんだよ。ヤツが口を封じられる可能性だって十分有り得るからな」


 言った後、やや重たげに息を吐き出して、何度も瞬きした。


 そして一課に戻り、デスクに座って、パソコンのディスプレイを見る。


 橋村も俺のパソコンに見入っていた。


「何かあるんですか?」


「うん。実はね、神宗会の構成員間で最近いろんなことがあってるんだよ。例えば――」


 そう言って、ファイルの開くボタンをクリックし、画面に映す。


「――当山は同じ構成員の池上徹と揉めていた。どっちが先に上のポストに行くかで。その池上は更に同じ構成員の田無賢一郎と揉めてる。三者間に利害関係はあったはずだ。俺もずっとこれが気になってた」


「じゃあ池上徹と田無賢一郎は、当山謙太と争う動機があるってことですか?」


「うん。そうとしか言いようがないな。疑いたくはないんだが、突き詰めてみるとね」


 軽く息をつき、パソコンを閉じないでスタンバイ状態にしてから、上着を着る。
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