労苦
 刑事課には前田と石川、それに他に数名の刑事が常駐している。


 前田が声を掛けてきた。


「ああ、梶間警部に橋村警部補。……相変わらず暇なしですね」


「ええ、捜査がありますから。疲れてます」


 本音を漏らすと、前田が帳場へ誘導して、俺たちが付いていく。


 そして扉を開け、フロア隅のコーヒーメーカーでコーヒーを二人分ホットで淹れて、差し出した。


「捜査が進まなくて、俺たち所轄も参ってまして」


 前田がそう言い、軽く息をつく。


 思っていた。


 ゆっくりする間がないと。


 ここの刑事たちも慎重なはずだ。


 下手すると、藪の中に隠れそうな事件なので……。



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