労苦
 フロア出入り口へと歩き出した。


 一課を出ようとした時、


「梶間、橋村、どこに行くつもりだ?」


 と背後から、吉村の声が聞こえる。


「……いえ。ちょっと野暮用を思い出しまして」


「三原伸吾殺害事件の捜査には手を出すな。あの件は所轄に任せてる。俺たち本庁のデカがやることじゃない」 
 

「分かってます。警察は組織で動きますから、スタンドプレーはしません」


 一言返し、歩き始める。


 いつも思うのだ。


 多少乱暴なことをしないと、進む捜査も進まないと。


 大体、捜査案件自体を所轄に丸投げするというのは、どういうことだろう?


 警視庁管内で起きた刑事事件なら、少なくとも立った帳場に本庁の人間がいるのが筋じゃないのか?



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