労苦
 と訊いてきた。


「ああ。いずれ事件の全貌が分かる。気にしなくていい」


「ですが、抜け駆けの捜査ですからね」


「まあ、仕方ないよ。上が所轄に投げ渡した案件だからな。……刑事部は目立って動かない。動くとすれば、組対だけだよ」


「川中組対部長が指図すれば、組対は稼働しますね」


「ああ。……どっちにしても、警察は必ず三原社長を殺害したホシを捕まえ、闇を暴く」


 そう言って、車のハンドルを握ったまま頷いてみせる。


 橋村が、


「俺も梶間さんに付いていきますよ。上司ですから」


 と言った。


 そしてスマホをスーツのポケットに入れ、前を向いて、軽く息をつく。


 新宿区に入り、南新宿へと向かった。



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