労苦
第5章
     5
 それから数日経ち、四月も下旬になると、初夏の陽気だ。


 神宗会の構成員で、三原伸吾殺害の被疑者と目される当山謙太と、そのライバルの池上徹、更に池上と競う田無賢一郎の三者の様相が、俺と橋村の間で出てきつつあった。


 三者間に利害関係があったことは間違いない。


 ずっと気になっていたことだ。


 つまり、池上と田無には、当山謙太と争う動機があるのである。


 神宗会が当山を使い、三原からデータの入ったフラッシュメモリを奪い取らせた可能性もあった。


 普通の刑事なら、こんな重箱の隅を突くようなことは調べ上げないだろう。


 当分、橋村と行動を共にすることにした。


 まともに捜査員を出せない一課の警官といくら角突き合わせても同じだ。


 南新宿署の帳場に顔を出すこともある。


 事前に警視庁から「あの二人組のデカが来ても追い返せ」などと命令が出ている可能性もあったのだし、警察官は何かと裏工作が好きな類の人間だ。
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