労苦
 不正をただす立場の役人が殺人教唆で逃げているなど、前代未聞だ。


 そう思い、息をつく。


 脇に立っていた橋村が、


「梶間さん、大丈夫ですか?」


 と訊いてきた。


「ああ。……所轄に行こう。あそこに行けば、前田・石川両巡査部長がいるし」


「ええ」


 橋村が端的にそう返し、俺を促して歩き出す。


 現段階では、正面突破するに越したことはない。


 おそらく所轄の捜査員もかなりの程度、聞き込みや地取り捜査などをしているだろう。


 だから、もうそろそろ組対が強制捜査する番だ。


 神宗会事務所に一気に踏み込むのである。


 もちろん、俺も橋村も刑事部の人間なので、捜索の担当は組対部だ。


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