労苦
 だが、別にいいのである。


 単に事件があれば、キソウの初動捜査の後、警視庁なり所轄の刑事なりが臨場するということに変わりはない。


 これは警察の捜査における、王道の方程式だった。


 どんなに時代が変わっても、消えないものである。


 四月上旬は暖かい。


 桜田門の並木通りの桜も、残らず散ってしまった。


 花冷えで少し寒さが戻ってきている。


 フロア隅のコーヒーメーカーでコーヒーを淹れて、飲みながら、デスクで作業を続けた。


 思う。


 多分、一課長の吉村も、理事官など上の人間たちも事件の詳細は知らないだろう。


 新宿区の裏手は表通りと違い、入り組んでいる。


 感じていた。
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