労苦
 何せ、昔から刑事は足で稼ぐのだし……。


 一課の人間の一人として自覚していた。


 その日も現場から南新宿署へと歩いていく。


 前田も石川も出払っていて、しばらく待つことにした。


 待ち時間にスマホを弄る。


 橋村も常にスマホを見ていた。


 若者らしく依存症なのだろう。


 四十代の俺も、常に頭の中は入れ替えている。


 古い情報は捜査に使えない。


 それに肝心の時間がないのだ。


 事件は刻一刻と風化していく。


 色褪せてしまうと、刑事もホシを探すのにまた一苦労する。


 だから、なるだけ事件の経緯を忠実に辿り、捜査していた。



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