労苦
 まあ、一々詮索などはしないが……。


 それにこのヤマは元々所轄に丸投げされたのだし……。


 俺たち本庁の刑事も人間関係は複雑だ。


 それに今捜査一課が追っているのは――神宗会関係者ももちろんだが――逃亡中の矢野原監察官である。


 役人が殺人教唆するなど、許されない。


 思っていた。


 今回の事件は警察官がバラバラで動いているから、尚更犯人サイドを利しやすいのだろうと。


 だが、必ず事件を解決させてみせる。


 そう感じ、やや重たげに息を吐きながらも、歩き続けた。


 都心の人の中を。


 体の芯が冷える。


 辺り一帯の冷気と、押し寄せる寒波で。
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