労苦
 殺人の可能性もあるから、逸早く捜査しないと、手遅れになるかもと。


 焦る気持ちもあった。


 だが、それを抑え込み、あえて気持ちをフラットに持っていく。


 しばらくパソコンに向かい、作業していた。


 四十代で、都内のマンションで妻と二人暮らしである。


 子供はいないのだが、妻の晴海(はるみ)は家にいて、家事をやってくれた。


 俺の給料だけで何とかやっていけるのだ。


 晴海も普段、ずっと支えてくれる。


 元は警視庁交通部交通課の婦警で、当時から一課にいた俺とは恋愛結婚だった。


 その日はずっとフロアに詰め、作業を続ける。


 合間にトイレに立つ時間があって。


 警視庁職員で現役の刑事というと、派手なイメージがあるのだが、実際は全然違う。


 地味にやっているのだった。
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