労苦
 だが、事件は解決してないので、勝手にここを閉じるわけにはいかない。


 前田も、そして他の捜査員たちもそう思っているようだった。


 刑事たちは常に前を向く。


 振り返っても、何もない。


 きついのだが、それが現実だった。


「神宗会に対する組対の捜査は始まるのでしょうか?」


 前田がそう訊いてきたので、


「ええ。……本庁も手抜かりはありませんよ」


 と返す。
 

「じゃあ、待つだけですね」


「そうです。捜査には気長さも必要です」


 当たり前のことだが、口にしてみると、沁みることだ。


 そして午後はずっと話をした。



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