労苦
「それは私の一存では何とも……」


 島谷が遠慮して、黙り込む。


 その後、軽く息をつき、言った。


「……協力は出来ないにしても、上には黙っておきますから」


「ああ、済まないね。俺も本来なら君のような優秀な若手が捜査に加わってくれると、ありがたいんだがな」


「いえ。……私も滝田警部補が戻るまで待ってるんですよ。今、仕事って言ったら、庶務とか雑用ばかりですし」


 島谷がそう言って、デスクでパソコンに向かう。


 そしてキーを叩き続けた。


 捜査員など、警視庁内にはたくさんいる。


 昔からそうなのだ。


 デカなど掃いて捨てるほどいる。


 単に自分の知らないところで活動しているだけで。
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