労苦
 一言声を掛けると、振り向いて、


「ああ、梶間警部、橋村警部補。お疲れ様です」


 と言ってきた。


「今から事件に関して話をしましょう」


 そう言うと、前田が立ち上がり、帳場へと向かう。


 付いていきながらも、躊躇うことがあった。


 すでに所轄はかなりの量の捜査情報を確保しているものと思われるからだ。


 それが分かっていても、あえて時間を割く。


 無駄だと思っていても、殺人事件の捜査の基本は所轄署にある。


 そう考えながら、捜査本部が置かれていた、今はうらびれているフロアへと向かった。


 フロア内は定期的に掃除も行われているようで、小ざっぱりしている。


 椅子に座り、淹れてもらったコーヒーを飲みながら、幾分気を抜いた。


 前田が、
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