労苦
 いろいろあっても、捜査は続く。


 刑事事件の捜査案件は、警視庁管内だけでも数えきれないぐらいある。


 稀にどうしようもなさを感じることもあった。


 だが、そんな時、気を落ち着けて考えれば、進むしかないことが容易に分かる。


 そして前進するのだ。


 その日も車を停めて降りた後、事件現場を一回りして、南新宿署へと向かった。


 所轄の刑事課は回っていたが、捜査員は出払っている。


 いったん外に出て、街を歩いた。


 立ちっぱなしで足が棒になりそうだ。


 普段から歩くのには慣れている。


 足で稼ぐのは、刑事の武器の一つだ。


 歩き続けた。


 新宿の街を。
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