労苦
 ビル前に着くと、刑事が大勢いる。


 皆、銃を持っていた。


 ビル内に矢野原がいるようで、中にはひと気がある。


 スーツを着た男性刑事が、拡声器で頻りに投降を呼びかけていた。


 無駄な抵抗は止めろと。


 瞬間、目の前のビルが大きな音を立てて木端微塵に吹き飛んだ。


 爆弾による元監察官自決は、警察だけでなく、世間を騒がせるに十分だった。


 燃えているビル内から、矢野原と思われる人間の焼死体が発見される。


 そして事件に関係する人間が一人闇に下ったことで、事態があやふやとなった。


 またか。


 皆そう思っている。


 そして俺たち警察官は捜査に関し、また振り出しに戻された。


 炎で燃えている現場ビルの前にしばらく佇む。
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