労苦
である俺の言えることだよ」


「泥臭く……ですか?」


「ああ。君はその言葉の意味が分かる?」


「ええ、何となく……」


 橋村が曖昧にそう言い、頷いてみせる。


 思っていた。


 一端の刑事なら、誰もが考えることだ。


 捜査が進まない時、デカもやけくそになりがちである。


 そんな時、深呼吸を繰り返せば、自分の自棄が分かる。


 こんなんじゃダメだと。


 そして基本に忠実になるのである。


 現場は鑑識が入った後で、何もかも持っていかれ、元の路地に戻っていた。


 だが、殺人事件が起こったことは間違いない事実だから、根気よく調べる。
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