労苦
 八係長の水谷はずっとデスクで調べ物などをしている。


 一つの係を率いるにしては、認識が甘い。


 部下の心をくみ取れないのだ。


 いつも思う。


 兵卒がバラバラでは、軍隊は動かないと。


 水谷もきっと心の奥底では、そう感じているだろう。


 だが、どうしようもない。


 いくら係長でも、個々の刑事の動きまでは見張れないからだ。


 それを利用し、俺も橋村も動いていた。


 暇はない。


 朝から一課を出払い、車で新宿へと向かった。


 そして繁華街にあるムーンへ行く。


 内田が逃げた後で、店はもぬけの殻だ。



< 86 / 666 >

この作品をシェア

pagetop