労苦
 ここは人種のるつぼだと。


 先週の悔恨を思い出した。


 内田を取り逃がしたという。


「いつまで街を見続けるんですか?」


 橋村がそう問うたので、


「しばらく根気よく見てなさい。きっといろいろ分かるから」


 と返す。


 そして歩き続けた。


 昼過ぎに裏通りの蕎麦屋で笊蕎麦を啜る。


 啜り終え、蕎麦湯を飲んだ後、しばらく黙り込んだ。


 考え事は絶えない。


 刑事は高度に頭脳を使う仕事だ。


 知恵を絞り、いろいろ考える。



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