私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)

自己嫌悪。

酷いこと言っちゃった。

泣き腫らした顔が、不細工過ぎて
笑える。


「本当に那智くんの事、好きだったんだね」


一部始終を見ていた香たちが、驚いていた。


「そうだよ、悪い?」


「そういうことじゃなくて、そんな風にウチらからしたら見えなかったもん」

香の言葉に、妙に納得する。


「下僕状態だったから?」

「ううん、レイナって、愛情表現が無いよね」

「あ、それは私も思ってた」

香の発言に、愛が同調する。

「なんというか、甘さが無いっていうの?好きとか言ったことある?」

「無いでしょ」

わたしが答える前に、茉莉が答えた。

合ってるだけに、何も言えない。

そういえば、1度も好きって
伝えたこと無い。

心の中では言ってるけど・・・。


「そういうのが足りないんじゃない?」

「うっ」

「半年返せって、レイナは付き合うって自分で決めたんでしょ?それは無いよ」

「なんとなく分かったとしても、明確な答えが無きゃ、那智くんは自分に自信持てないでしょ」

「よくコレで半年保ったね」


・・・ちょっと待って。


なんかおかしくない??

わたし、責められてるよね??



「なんで那智の味方なの??」

「味方っていうか、那智の性格を
考えた上での見解だけど?」

茉莉が呆れた顔で腕を組んでいる。


そうなんだけど、そうなんだけどさ!!


「那智くんから電話待つんじゃなくて、
自分から電話してみたら??」


ブレザーのポケットを指差す愛。


「わかったよ」


なんか、女の子が束になると怖い。


「よく出来ました」








その日の夜、わたしから那智に電話をかけた。






呼び出しコール2回目で切りそうになったけど、3回目でようやく那智が出てくれた。


「はい」


「那智?何してた?」


「レイナに電話しようとしてた」


なっ!それなら直ぐ出てよっ。


「その割りに出るの遅かったよね?」


「ビックリしたから。レイナからかかって来ること滅多に無いし、貴重かもと思って」


わたし、どんだけ那智任せだったんだろう。


「あのさ、今日言ったことゴメンなさい」



「へ?なんでレイナが謝るの?」



「あのあとみんなに怒られて気づいたんだけど、那智がわたしと付き合ってもらってるって思っちゃってたのは、わたしのせいだったかもって思って」


「・・・」



「ほらっ、わたし那智に色々してもらってるのに、何もしてあげてないし。甘えるのとか苦手だし」


「俺はレイナと一緒にいるだけで、凄い幸せだよ。レイナの笑った顔とか、照れた顔とか、近くで見れてすごい嬉しいよ」


初めて言われる甘い言葉に、カーーっと顔が熱くなる。


電話で良かった、今のわたしの顔、絶対真っ赤だ。


ニヤニヤして、那智には見せられないよ。




「ありがと。那智怒ってない?わたしのこと、嫌いになってない?」



「全然、怒ってくれて嬉しかった。思い出すだけでニヤけてヤバい」


「もー、忘れてよ」


裏を返せば那智が好きって叫んでる様なもんだよね。


そして、それを皆に聞かれたっていう・・・。




「レイナ?」


「ん?」


「俺の彼女でいてくれてありがと」


「うん、ありがたく思え」


「また、そういう」


ダメだ、わたし顔は可愛いけど、
可愛い女にはなれない。


「あー!!!じゃあ、一言だけ」


「ん?」


「那智が好き」


「・・・・」


なに、この甘い感じは。


そして、なぜ無言になんの!


「なんか言いなさいよ」


「ごめん、もう一回。録音させて」


「2度と言いません」


嬉しそうな那智の声に、無性に顔が見たくなった。


出窓を開けて夜空を見上げる。


「レイナ」


電話口と、外の両方から那智の声がした。



まさかと思い、下を見ると那智が手を振って立っていた。




ヤバい、泣きそうです。





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