私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
ルームウェアが可愛いので良かった。
慌てて2階から降りて来て、自分の姿を確認する。
紫のパステルカラーのセットアップは、この前買ったばかりのお気に入り。
スッピンは今更恥ずかしくないから
大丈夫。
ドアを勢い良く開けると、那智がスマホをデニムのポケットにしまっているところだった。
「なんでいるの??」
「散歩しながら色々考えてたら、気付いたらココに立ってた」
照れ臭そうに答えると、頭を掻きむしった。
家の前の公園に移動して、
2人でベンチに腰掛ける。
「あはっ。一歩間違えたらストーカーだよね」
「え?マジ?」
慌て出す那智に、可笑しくなって笑ってしまう。
「ウソに決まってんじゃん」
「・・・レイナ、あの、本当ごめん」
真剣な、真っ直ぐな視線をわたしに向ける。
「もう良いって」
「でも・・・」
「だってさ、考えたらおかしくない?那智と付き合ったら女子からの嫌がらせ無くなるとか。未だに私の彼氏取ったとか因縁つけられてるんだよ?しかも、男からの誘いだって普通にあるし。わたしのことナメてるでしょ」
「え、そうなの?」
「この前のセンパイの時もだけど、何か言われてわたしに申し訳ないとか思わないで。わたしが那智を選んだんだから、自信持って欲しいよ」
「うん、ありがとう」
目尻を下げて微笑む那智が、すっごく愛おしい。
「じゃあ、この話はもう終わり」
「ん」
5月の夜は、少し肌寒い。
でも、凄く星が綺麗。
「そういえば、レイナって幼稚園の時のこと覚えてる?」
「なに?急に」
「この公園で良く遊んだなって思って」
もう十何年も前の話だけど、なんとなく覚えてる。
幼稚園が終わって、那智と良く遊んだわ。
「あの土管の中で、俺の初めてが奪われたんだけど」
はん!???
「誰?誰に奪われたの??」
「・・・やっぱり覚えてない??」
「・・・まさか、わたし??」
「うん」
ポッと頬を染めた那智が、街灯に照らされていた。
・・・・・神様、どうか時間を巻き戻して下さい。
なんて、卑猥な幼稚園児だったんだ、私は。