私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
「わたしだったんだね」
でも、相手がわたしで良かった。
全くおぼえてないんだけどね。
「やっぱり忘れてた?」
「うん、すっかり。なんであの時教えてくれなかったの??」
すっごい不安だったんだから。
「なんとなく」
そのなんとなくのせいで、わたしがどれだけ悩んだか!
「大事なことなんだけど。那智の初めてがわたしってことは、わたしの初めては那智ってことなんだよ??」
言った後で、すっごくはずかしくなった。
それは那智もおなじだったようで、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ちょっ、照れないでよ」
腕を引っ張ると、諦めたように顔を
わたしに向ける。
「レイナだって照れてんじゃん」
ドキッ。
そんな拗ねたように言わないでよ!
なんだか那智の表情一つ一つに
ドキドキしてるわたしって
異常なんだろうか。
「なーち」
「ん?」
勢い任せに那智の肩にコテンと頭を預ける。
ビクっと体が動いたけど、直ぐに大人しくなった。
心地よくなって、目を閉じる。