私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)


今度のデートで、私から那智に
キスしよう。


きっと、那智はしてこないと思うから。


そんなことを考えていると、頭を預けていた体がフワっと浮いていなくなった。

ギシッ。


わたしに覆いかぶさるように腰を曲げた那智が、ベンチの背もたれに片手を置いた。


顔を上げると、那智のキレイに整った顔が見たことのない程の至近距離にいて、思わず息を呑んだ。


伏し目がちな瞳は、確実にわたしの唇を捉えている。


あまりの自然な動きについていけなくて、目を閉じる暇も無かった。


気付いた時には自分の唇に柔らかくて暖かい感触だけが残っていた。


たった一秒のキス。


だけど、那智の全ての行動が脳裏に焼き付いて離れなかった。


「ご、ごめん!なんか体が勝手にっ」


那智は慌ててわたしから離れ、手で口を押さえていた。



なに?いまの、自然にやったことなの?

信じられないほど慣れた
仕草に、わたしは危険を感じた。


今日から那智は天然危険物だ!








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