私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
ライバル出現??
那智は優しい。
すっごく優しい。
それは、わたし以外にも同じだ。
「那智くん、高いところ届かな〜い」
たまたま那智のいるクラスの前を
通ると、黒板消しを猫なで声をした女が那智に頼んでいるところだった。
「代わるよ」
黒板消しを受け取ると、そこまで高くない那智でも簡単に消すことが出来た。
「ありがと〜!助かった〜!」
そんなの、那智じゃなくても
良いじゃん。
黒板消しを置くと、手を洗うために教室から出ようとした那智と目が合った。
「あれ?来てくれたの?」
パァっと笑顔になる那智に、嬉しくなったけど、別にたまたま通っただけのわたし。
「ううん、2組の梓に教科書借りに行こうと思って」
「なんの?教科書?」
「数学」
「俺の貸すよ。後で取りに行くし」
わたしの返答を待たずして、尻尾を
振って自分の席に向かう那智。
その後ろ姿を見ていると、痛い視線に気付いた。
さっき那智に黒板を消させた女だ。
わたしより小さくてチンチクリンだけど、肩まで伸びた髪を緩く巻いて、まんまるくて大きな瞳。
ぷっくりした唇は、多分リップで
作られたモノだろう。
総合的に見ても、男からのモテる女子。
わたしを睨んでるわけでもないけど、
困ったような、悲しそうな表情だ。
「はい、教科書」
那智から教科書を受け取ると、さっきまでいた女はもうわたしを見ていなかった。
「じゃ、後でね」
大きく手を振る那智にため息をつく。
那智のクセにモテないでよー!!!
「絶対あの女那智のこと好きだわ」
「3組の矢沢??」
「うん、確かそんな名前だったような」
茉莉に一部始終を愚痴ると、身体的特徴だけで直ぐに名前が出て来た。
同じクラスにならないと、フルネームは覚えられない。
「あの子良い子だよ。男女分け隔てなく優しいし裏がない。誰かさんと違って」
茉莉は相変わらずわたしをイジるのが
趣味らしい。
「わたし?」
「あ、違った!裏は無いけど、性格ブスだったね」
「ごめーん、否定できない」
「開き直るのが1番タチが悪い」