私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
どどど、どーしよー!!!!!
「ままま茉莉、那智がわたしを振って
告って来た女に行くわけないよね??」
「動揺しまくりじゃん。分かんないよ、
日頃、那智を下僕のようやに扱ってるし、甘え上手な可愛い女の子が告ってきたら、コロっと行っちゃうんじゃない?」
うぅ、面白がってやがる。
親友がピンチの時に。
「いや、那智に告る女なんて、どうせ
ドSで性格に難ありな女でしょ」
「あんたが言うな。そんなに気になるなら見に行けば??」
「は?見に行く?わたしが??」
そんなことするのは、わたしのプライドが許さない。
「見に行かなくて良いの?どんな女が
告るか知りたくないの??」
「べべべ別に??全っっ然!!」
「・・・あそ、じゃあ私は先に帰るよ」
付き合いきれないと言わんばかりに、カバンを肩に掛けた茉莉が教室から出て行ってしまった。
冷酷な女めーーーー!!!
でも、たとえカレシでも告白の場面に
彼女が行くのはどうかと思う。
そりゃ気になるよ?知りたいよ?
女の顔見てボロクソに
言いたいし、那智に行かないでって
引き止めたい。
だけど、私も那智に告白された時、
ガチガチに緊張した那智の姿を
目の当たりにして、
凄く勇気がいることなんだって
知ったし、告白する側の気持ちも
少しは分かるつもり。
だから、わたしがソコに行くのは
フェアじゃないかなってーーーーー。
そんな事言ってる間に急展開してたら
無茶苦茶困るけど!!!!
教室の中をウロウロしながら色々考えていると、5時近くになっていた。
「もう、こんな時間!」
慌てて教室を出て昇降口に行くと、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「レイナ」
振り返ると、那智と付き合う前まで
仲の良かったセンパイだった。
なんだよ、一瞬那智かと思ったじゃん。
紛らわしいセンパイに一応笑顔で挨拶。
「後藤センパイ、久しぶり。そして、さようなら」
「ちょっ、そんだけ??」
この人、話すと長いんだよね。今は那智の事で頭がいっぱいだから、世間話なら今度にして欲しい。
「あはは。那智見ませんでした?」
「那智?見てないけど。那智みたいなダサいのと、まだ
付き合ってんの?」
進学先も決まっていないような男が那智の事バカにすんな。
「はい」
「あいつのどこがいいの?」
「えー?そんな恥ずかしいこと
センパイに言わなきゃ
いけないんですか?」
あははと笑っていると、急に肩がぐいっと後ろに傾いた。
「センパイ、レイナを口説くのやめてくれます?」
頭上から聞こえた低い声。
空手の試合以上の真剣な目つきに、
全身が痺れた。
「は?なにお前。ダレに言ってんの」
ムッとした表情のセンパイが、臨戦態勢に入る。
「もう那智!なに冗談言ってんの。センパイ、本気にしちゃってんじゃん!」
慌てて那智の胸をポンポン叩く。
我に返ったのか、那智は「あ、本当だ」
と呟いていた。
「へ?冗談?なんだよ、びっくりさせんな。マジ考えてること分かんねーわ。じゃあな」
なんだかホッとしたようなセンパイに胸を撫で下ろし、那智の方を向く。
「勝手にカッコ良くなんないでよ」
頬を膨らまして怒る私に、那智の顔はみるみるうちに赤くなっていく。
そんな可愛くなられたら、聞きたいことも聞けなくなってしまう。
「帰ろ」
私の言葉に、那智は下駄箱から私のローファーを下に置いてくれた。
「断ったから」
その一言で、どれだけわたしの心が
救われるか那智は知らないだろう。
「そう」
「待っててくれてありがとう」
「待ってなんかないです」
「え、そうなの??」
「凄く眠くて教室で寝ちゃってた」
「自分のベッド以外で寝れないって
言ってたなかった?」
「・・凄く眠かったから!」
「ふふ、そっか」
絶対バレてる・・・。