私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
初キス
那智と付き合ってもうすぐ半年。
わたしたち、キスすらしたこと
ありません。
「今のままで十分幸せ」
「へー、今時珍しいね」
雑誌を読みながら相槌を打つ茉莉は、経験豊富でわたしの恋愛の師匠。
「でもね?欲を言えばなんだけど、
そろそろチューぐらいしたいわけよ」
なんならその先も。
「すれば?」
「すれば?って、お姉さん。そんな、簡単に言わないでよ」
「那智とのキスなんて、歯が当たって終わりでしょ」
んな、中学生のキスじゃないんだから。
「ん?那智って、ファーストキスまだかな?」
ふと感じた疑問。
幼馴染だけど、今までそんな影
無かったし。
いないよね?それにわたしに告った時、
ガチガチになってだったもん。
無い無い!!!
「さぁ、でも、あぁいうタイプに限って
意外に進んでるっていうし」
・・・・マジ??
「だだだだ大丈夫だよ!那智の初めては
全部わたしが貰うんだから!」
「それは男のセリフ」
「男女差別反対!」
「指をさすな!じゃあ、聞いてみなよ。キスしたことあるか、ないか」
「聞いてみなくても、那智ならしたことないから!絶対!!!!」
帰りのチャイムが鳴ってしばらくすると、那智が教室にやって来た。
「帰ろ」
「うん、じゃ、茉莉バイバイ」
茉莉に意味あり気な視線を送ると、
「バイバイ」
と、下を向いて手を振られしまった。
おい!!!
コッチは今から重大な用件を
聞かなきゃいけないってのに!!!!
「・・レイナ?」
なかなか来ないわたしに那智が首を
傾げている。
可愛い、子犬みたい。
那智が可愛すぎてヤバイです。
こんな純真無垢な子が、キスなんて
してるはずがない!!!
「お腹空かない?どっか寄ろうよ」
「あー、ごめん。小遣いあんまなくて」
そういえば、最近寄り道多かったっけ。
「じゃあ、わたしのおごりで」
「え??どうした?熱でもあるんじゃ・・」
「は?わたしだって、たまには
奢るよ」
「たまにはって、初めてだよね?」
「なにか言った?」
「いや、別に」
大人しくなった那智を連れて入ったお店は、最近駅前に出来たカフェ。
チーズケーキが凄く美味しいと、
クラスメイトから聞いていた。
一度、那智と行ってみたいと
思っていた。
「チーズケーキ一つと、アイスティー二つ」
「かしこまりました」
店員が下がると、那智がソワソワしだした。
「こんな高そうな店、大丈夫なの?」
アンティーク調な静かなお店は、那智に
とったら高級感が感じられるらしい。
「香と愛が行ったぐらいだから、大丈夫だよ」
「へー」
知ってる名前を出すと、少し安堵したのか、やっと背もたれに体を預けた。
アイスティーだけで
600円もして、びっくりしたのは
那智には内緒。
しばらくして店員が注文した商品を
テーブルに置くと、チーズケーキを
那智に差し出した。
「え?」
驚いた那智の顔。
「わたしチーズケーキ食べないでしょ?」
「この店のは食べれるとかじゃなくて?」
「17年近く生きて来て、食べれなかったものが、早々食べれるようになるわけないでしょ」
疑いの眼差しを向ける那智。
なんか、察したかな??
「・・頂きます」
だけど、一応食べるんだね。
那智の好きなケーキはチーズケーキだって知ってるんだから。
ふふふ。
餌付け成功!
那智がチーズケーキを一口運んだところで、頬杖を付いた。
「ところで那智って、今まで誰かと
チューしたことある??」
「・・ゲホッ!!」
突然咽せた那智が、慌ててアイスティーを喉に流し込んだ。