私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
なに?この反応!!絶対なんかある!
「な、無いよ」
嘘つけ!
「本当に??」
目を逸らす那智の顔を覗き込む。
「うん、本当」
あからさまに目が泳いでるよ。
・・・こりゃ、黒だ。
「汚れた那智なん那智じゃない」
ポロリと出た言葉に、那智は首を傾げてる。
キレイに食べ終えたケーキの皿を見て、なんだか無償に泣きたくなった。
物凄い嫉妬心に心が張り裂けそうになる。
「帰る」
「う、うん」
その日の夜、茉莉に電話をした。
「那智、誰かとチューしてた」
「本当に?」
「うん、本人は否定してるけど、
明らかに動揺してた」
「まさかだね」
こんなことになるなら、聞かなきゃ良かった。
「茉莉のせいだ」
「は?なんで私??」
「だって、だって、茉莉が聞けって
言うから・・えー〜ーん!!!」
電話口で泣くわたしに、茉莉はハーっとため息をついた。
「過去の事で、ウダウダ言わない!
キスしたことない那智を好きになった
わけじゃないでしょ??」
「・・そうだけど」
「これから、レイナが那智にたくさんすれば良いじゃない?」
わたしが、那智と??
たくさん????
「・・・ナイス、茉莉姉さん」
「は?」
「そうだよね??どんな女としたかなんて気になってたけど、今はわたしと付き合ってんだしね!で?」
「は?なにが“で?”よ」
「シュチュエーション、カモン」
なんせ、わたしにとったら初キス
だからね。
ちゃーーーんと、演出しなきゃ!
「知らないよ、自分で考えな!ムダに頭がいいくせに、こういうの本当ダメだよね」
チッ。
日頃ノート貸してやってんのに、
ケチな親友め!
「分かったよー!寝ずに考えますぅー」
「はいはい」
電話を切ると、ネットで色々検索。
彼の家で初キス。
夜景を見ながら初キス。
教室での初キス。
なかなか色々あるんだなぁ。
「観覧車で初キス???しかも、永遠に結ばれる???これ良いじゃん!!」
半年記念日は、遊園地で決定!!!
「え、水族館??」
次の日の朝、頭を掻いた那智が照れ臭そうにチケットを出して来た。
「小遣い貯めて、買ったんだ。プレミアムチケット。一緒に行ける??」
新しくオープンする水族館。
オープン初日は、夜に花火が上がったり
色々催しがあるらしい。
「もちろん!那智、ありがとう!!」
大好き!
「エヘヘ、来週の土曜日ね」
・・ん?来週の土曜日って、半年記念日じゃん!!!!
遊園地って、決めてたのに!!!
「何時に迎えにこればいい??混むかな?早目が良いよね??」
普段無口な那智が、嬉しそうにわたしが持ってるチケットを眺めながら話すのを見て、遊園地で初キスなんて、
どうでもよくなってしまった。
「うーん、8時とか?ちゃんと起こしてよ?」
女の子は準備が大変なんだから。
「6時ぐらい?」
「うん、お土産も沢山買ってね?」
「うん♪」
ふふ、那智が楽しそうにしてると、わたしも楽しくなる。
何着てこーー??
来週が待ち遠しいよーーー!!
「バカップル」
後ろを振り向くと、茉莉が後ろから
わたしたちを追い抜いて行く。