私のステキな下僕 〜カレシ〜(短編)
「バカップル・・」
茉莉に言われて傷ついたのか、那智が復唱している。
「朝からイチャイチャしないでくれる?」
「茉莉、独り身だもんね。ゴメンね」
「バカップルよりマシよ。夜中に泣きついてきたかと思えば、なんなのよ。全く」
ちょーーーーー!!!!
「泣きつく??」
「那智、早く教室入ろ?寒いし」
わたしのローファーを下駄箱に入れた那智が、上履きを床に置く。
背中を押して階段を上がると、後ろを振り向き、茉莉にあっかんべーをした。
「今日のお昼は焼きそばパンで良いよ。売り切れてたら、コロッケパンね」
わたしの教室まで送ると、那智は尻尾を振って自分のクラスに向かった。
「ねぇ、いつまで続けるの?奴隷生活」
教室に入ってきた茉莉が、長い前髪を掻き上げる。
「奴隷じゃないよ、下僕だし。それに、わたしがしてって言ったんじゃないんだよね」
昔からのクセ??
「じゃあドM??」
「あはは、かもね」
「でも、きっかけはあったでしょ?」
そう言われて思い出した、中1の秋。
「カミソリ事件??」
「は?カミソリ?」
眉をしかめた茉莉が、わたしの隣の席に座る。
「中1の秋頃だったかな、いつもラブレターとか下駄箱に入ってたんだけど、カミソリが入ってた事があって、ローファーの中に画鋲が入ってた事もあった」
ほら、わたしムダにかわいいし。
「あぁ、性格悪いもんね」
おい、納得しないでよ!
「そしたら那智が、これから俺が確認するとか言い出して、ゴミだらけのカバンも、危ないからってキレイにしてくれるようになった」
「購買にパンをパシるのは??」
「あぁ、購買の周り混むじゃん?そのどさくさに紛れて胸揉まれたことあったんだよねー、あれは相当ショックだった。それから、那智が買いに行くようになったんだ」
那智がわたしに色々してくれるのは、
ちゃんとした理由があったりする。
それが周りから見たら下僕と化してる
様に見えるみたい。
わたしも下僕の響きが好きで言っちゃうけど、強制してるわけじゃないんだ。