うつとうしい
うつのジレンマ
今日は好きなご当地アイドルのライヴ。
隆史は久しぶりに陽気だった。
電車を乗り継いで会場へ着いた。ファンらしき人達がもう並んでいた。

アイドルのロゴの入ったTシャツを皆着ていた。

いよいよ開場

隆史はテンションが上がった。

しかしライヴは始まらず放送が流れた。
メンバーのまゆりが他の仕事で遅れてるので急遽DJタイムにします!

音楽がかかりメンバーが踊る。隆史は呆気に取られた。

握手会が始まる前に隆史は会場を後にした。

帰りしな電車の中で発作が出た。たまに出るのだが、音に過敏になり非常に苦しい。隆史は必死に堪えた。頓服は財布の中だが電車が混んでて出せない。

苦しい時間が終わった。アイドルの楽しい時間が懐かしかった。

自宅に着いた隆史は横になった。

ふぅ やっと頓服が飲めるぜ。

ああ うつとうしい。
難儀な病気だぜ。これはパニックなんかな?分からないなあ。
隆史はそのまま飯も食わずに寝てしまった。


翌朝、会社の総務から電話があった。

「青木さん 総務の神原です。お加減いかがですか?1ヶ月が過ぎましたが復職出来そうですか?」

そうですね、主治医とも相談しますが、まだ安定しないですね。夜もよく眠れてませんし、まだ復職は出来そうにないですね。

「わかりました。復職延長の準備しておきます。またご連絡致します。失礼致します。」

ふぅ やっぱりまだしんどいな。仕事なんてやれそうにないな。
隆史は不安で押し潰されそうになった。
昨日の発作も苦しかった。

なんでこんなにもうつは辛いんだろう。
隆史はうつの渦に完全に巻き込まれていた。

次第に何もかもが面倒になり、体を動かすことも辛く、服もパジャマのまま過ごすことが多かった。
リックの散歩も行けず、引きこもる日々が続いた。

食欲もなく、もう一人暮らしするのが限界のように思えた。
実家に帰ろうかな?
このままじゃ何も進まないし、苦しいだけだ。

隆史は実家に帰る決意を固めた。

リックが不安そうに見つめている。ようリックよ。ごめんな 散歩も行けずに迷惑かけたな。

リックは隆史の顔を舐めた。

隆史は泣いた。
ひたすら泣いた。

うつとうしい。

もううつは嫌だ。

携帯を手に取り実家に電話をかけた。
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