鬼姫伝説 Ⅰ
「いい加減、放しやがれ!」
鬼羅は怒鳴りつけ、強引に体を引き離す。
千代は名残惜しそうに手を伸ばしたまま悲しげな表情で鬼羅を見上げた。
そんな千代に圧され戸惑う鬼羅。
そしてそれを見てせせら笑う琉鬼。
「てめぇ、ここでなにしてる」
「千代です。わたくしの名前は千代にございます」
にっこりと笑って自己紹介をする千代。
聞かれたこととまったく違う答えをしていることに気づいていない。
「ここで、なにをしているのか聞いているんだ」
千代に振り回されていることを自覚しながら、同じ質問を投げかける。
「冒険です。初めて、外の世界を冒険しているのです」
千代は胸を張りそう言い放つ。
千代と話していても心が乱されるだけだと鬼羅は早々に見切りをつけ踵を返し歩き出す。
琉鬼は相変わらず笑いがこらえ切れておらず喉を鳴らしながらそれでも鬼羅について歩き出した。