鬼姫伝説 Ⅰ
「ただいまー」
そんな二人のもとに琉鬼が戻ってきた。
手には濡れた布が。
千代の前に座り込んで雑におでこにその濡れた布を押し付ける。
「ひゃっ、冷たいです」
「我慢して」
「はいっ・・・」
布から滴る水が着物に模様を描く。
千代はおとなしくじっとしている。
ヒンヤリとした冷たさが心地よく思えた。
「そろそろ家に戻った方がいい」
「え?」
「もうじき日が暮れる。森は危険だよ」
いつの間にか太陽は傾き赤い夕焼けが辺りを包む。
木に覆われたこの場所は特別暗闇も早くやってくる。
「大変!日暮れまでに戻らないと!」
「鬼羅、送ってやりなよ」
「なんで俺が」
「俺が送ってあげてもいいけど?」
「・・・チッ」
琉鬼が意味深に笑うと、鬼羅は舌打ちをしてたちあがった。