鬼姫伝説 Ⅰ
「冗談だと思った?」
「え?」
「人間を食べる趣味は確かにないけど、殺すことなんてなんとも思ってないよ」
「・・・」
「今、ちぃちゃんを殺せと鬼羅に言われれば、俺はためらうことなくちぃちゃんを殺せる」
残酷な言葉。
淡々と口から発せられた温もりのない言葉たち。
それが冗談なんかではないことがわかるほど、琉鬼の表情は冷め切っていた。
あった時から、明るく砕けた口調の琉鬼。
それは、見せ掛けだったのか。
「なぜ・・・」
千代の口からようやく吐き出された言葉は、そんな言葉だった。
「なぜ?俺が鬼で、君が人間だから」
それは、当たり前のように。
それは、決まりきったことのように話す。
千代にとっては、それは当たり前のことでは決してないのに。