鬼姫伝説 Ⅰ
「なにをしている」
「見てわからないの?言ってもわからない奴には思い知らせてやってるんだ」
千代を助けたのは鬼羅だった。
とめられたことにいら立ちながら琉鬼は千代から体をそらした。
「もう、こんな森に来たくなくなるように。俺たちに関わろうと思わなくなるように」
「琉鬼・・・」
「鬼羅は平気なのかよ!こいつは人間なんだぞ!?こいつだって、あの人間たちと同じだ!」
鬼羅に掴れていたままの腕を払いながら琉鬼は声を荒げた。
「そんなことをしたら、こいつら人間と同じになるだろ」
「っ!だから、こいつが目の前ちょろちょろしていても許すのか!?」
その声は、悲痛に震えていた。
世間知らずの千代にも琉鬼がどれほど人間を憎んでいるのかわかった。
今にも泣きだしそうな声。
「帰れ。・・・そしてもうこの森に近づくな」
鬼羅が千代に向かってそう言い放った。