鬼姫伝説 Ⅰ
「母上、聞きたいことがあるのです」
意を決して千代は沙代に聞いてみることにした。
ずっと何も聞かされてこなかった。
この世界に鬼が存在するなどと。
「鬼とは、なんですか?鬼と人間の間に、なにがあったのですか」
琉鬼のあの恨みのこもった瞳。
それは自分にというよりも、人間そのものにのように思えた。
「なぜ、そんなことを?・・・鬼に会ったの?」
「・・・いいえ、城下の人たちが話していたのです」
会った、と言い出せなかった。
鬼という単語を言った時の沙代の顔が引きつっていたから。
「あなたが知らなくてもいいことです」
「どうして!?母上が言ったのですよ!私は世間知らずだと!世間を知る必要があるって!」
頑なに話そうとしない沙代に、千代が詰め寄る。