鬼姫伝説 Ⅰ
「鬼羅・・・、お願いします。あなたの、苦しみも憎しみも、恨みも・・・。すべて私に教えてください。もう、なにも知らないままは嫌なのです」
「お前に話すことなど」
「鬼羅・・・」
「お前に話すことなど何もない」
鬼羅はそのまま千代の横を通り過ぎ小屋の中に入ってしまった。
残された千代は、立ちすくんだまま。
届かない言葉。
届かない想い。
それはもっともだと。
「もう・・・、鳥籠の中にいる鳥でいたくないの・・・」
羽ばたきたい、もっと外へ。
どんなに苦難が待ち受けている外界でも。
「鬼羅・・・」
雨は大粒。
千代の身体を無情にも冷やしていく。
それでも千代はその場を動けずにいた。