鬼姫伝説 Ⅰ
「鬼羅・・・。私、鬼羅と親しくなりたいのです」
「・・・なぜ、俺なんだ。お前は、人間なんだぞ」
「私と鬼羅は、違うのですか?」
真っ直ぐな千代の言葉に、鬼羅は言葉を失った。
いつだって千代はまっすぐで、問いかけられる言葉に鬼羅は答えることができない。
それは無知だからこそなせることか。
それとも、千代だからこそなのか。
鬼羅には、わからずにいた。
「なぜ、人間と鬼が親しくなってはいけないのです?こんなに近くにいるのに。こうして顔をあわせてお話ができるのに」
「わかったから、もう寝ろ。悪化するぞ」
「鬼羅がわかってくれるまで、寝ません。鬼羅の事を教えてください。もっと、鬼羅の話を聞きたいのです」
どうしてこんなにも自分に拘るのだろう。
会いたくなんてないのに。
自分の心をこれ以上かき乱してほしくはないのに。
鬼羅はグッと握りしめた拳に力を入れる。
「人間は、俺の仲間をたくさん殺した。確かに、俺の仲間が人間を殺してしまったこともあった。だが、それは一握りの連中だった」
話したところで何が変わるというのか。
それでも、千代の瞳に嘘はつけなかった。