鬼姫伝説 Ⅰ
「お前・・・いい匂いがする」
千代の肩口に顔をうずめ鬼羅がそう言う。
千代はくすぐったさに肩をすぼめ、クスクスと笑った。
幸せな時だった。
拒絶していた時の苦しさはなくなり。
素直になれば、こんなにも心が軽いのかと。
惹かれ合う二人。
それは必然か。
その時、外が騒がしくなった。
「探せー!」
「こっちはいないぞ!」
男たちの声が聞こえ始める。
いつだって静けさに包まれていた森。
その静寂が打ち消されている。
「鬼羅・・・?」
「人間の臭い・・・」
「え?」
ギュッと鬼羅の着物を掴む。
千代の肩を抱き安心させるように力を込めた。