鬼姫伝説 Ⅰ
目の前に絶望が広がっているよう。
せっかく、鬼羅と近づけたと思ったのに。
世界が、広がっていくのだと思ったのに。
「鬼羅・・・」
ケガはしていないだろうか。
また、人間への憎しみを募らせてしまっただろうか。
自分のことさえもう、嫌いになってしまっただろうか。
絶望に溢れだした涙。
それは止まることなく。
ただただ泣き崩れるしかなかった。
食事を運んでくる杏の心配する声も届かず。
食事に手を付けることもせず。
心を閉ざしていった。
カタカタ
窓から音が聞こえる。
カラカラとゆっくりと開かれるその窓。
「見つけた」
優しい声を聞いた。