鬼姫伝説 Ⅰ
「鬼羅っ・・・!」
「し!人が来るだろう」
窓から入ってきた鬼羅は、着物のあちこちが切り刻まれボロボロの姿。
頬には一本赤い線が走る。
着物はところどころ赤く染まり、傷口が痛々しい。
「鬼羅、無事で!ああ、こんな怪我を」
鬼羅に駆け寄り確かめるように体に触れる。
時々痛みが走るのか顔をしかめながら鬼羅は千代を受け止めた。
「千代、よかった。お前も無事だったのだな」
「ええ。でも、部屋に閉じ込められてしまって」
「そうか」
鬼羅の掌が、そっと千代の頬を流れる涙を拭う。
「けがの手当てを」
「いや、いい。お前の無事が知りたかっただけだ」
「鬼羅、私をここから連れ去って!」
すがるように鬼羅を掴み、訴える。
こんなところにもういたくない。
「鳥籠のようなこんな場所、もう嫌なの!」