鬼姫伝説 Ⅰ



天を匿うことは結構簡単だった。
あまり千代の部屋を尋ねる者も元からいない。

そして、鬼は嗅覚にも優れているため誰かが来ればすぐにわかる。
その上人が来たとしても子鬼のため隠れる場所はいくらでもあった。




「まんぷくじゃー」




千代に運ばれてきた料理をたらふく食べ満足げに転がる。
千代はそんな天を見つめニコニコと嬉しそうに笑う。
いつも一人ぼっちだった空間に、こうして話し相手がいるというのはこんなにもうれしいものだったのか、と。



「天さま、鬼羅はいったいどのようなお方なのですか?」




膨らんだお腹をさすりながら天が見上げる。
そこには少し寂しげな顔の千代がいた。




「おとこらしいやつだ。いつもおれたちなかまのことをかんがえうごいてくれるいいやつだ!」

「天さまは、鬼羅をお慕いしているのですね」

「ああ!おれはきらがすきだ!」




誇らしく答える天に、羨ましくなった。
鬼である天はいつだって鬼羅の側にいられる。
いつだって・・・。




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