鬼姫伝説 Ⅰ
「鬼羅です・・・」
その答えに迷いはなかった。
本当なら、今すぐに会いに行きたい。
この場所もこの位置も全部捨ててしまいたい。
でも、それができないのは。
それを鬼羅は望んでいないような気がするから。
「なら、それがこたえだなっ」
考えれば考えるほど心に鉛を抱えているように重い。
こんなこと、今までなかった。
鬼羅に出会ってから。
こんなにも、考えて、考えて、苦しくて、苦しくて。
「ちよ」
天が囁く。
「きらくにいけ」
それは優しく。
語りかけるように。