鬼姫伝説 Ⅰ
「迎えに来たんだ。こいつを」
「天さまを・・・」
「こいつにさま付けなんていらないよ。ちなみに俺にも」
「ですが・・・」
「鬼羅は鬼羅って呼ぶじゃん」
にっこりと柔らかな笑顔を向ける。
その笑顔を見て、千代は少しホッとした。
「ごめんね、ちぃちゃん。天が邪魔をして」
「いえ、天がいてくれたのでとても楽しかったのです」
「そう・・・。でも、いつまでもここにいるわけにはいかないから、連れて帰るね」
「あ・・・そうですよね・・・。はい」
寂しい。
また一人になってしまうのか。
千代の表情が陰る。
「・・・鬼羅に。今度顔を出すように言っておくよ」
「え」
琉鬼は立ち上がり、入ってきた窓の方へ歩き出す。